植物は窒素をどう吸収するか?
植物を育てる場合、「窒素」「リン酸」「カリ」この3要素が大切なことは知られています。この中で窒素は植物を成長させる上で特に重要なのですが、窒素の量の扱いをどうするかが自然環境を守る上で大切なことがわかっています。
植物にとって「窒素」は必要不可欠です。畑などにまかれた有機肥料の中の窒素成分は、当初アンモニア態窒素の状態です。しかし、このままの状態では植物はこの栄養分を摂取することができません。
そこで、登場するのが土壌微生物の「硝化菌」です。硝化菌によって、アンモニア態窒素は『硝酸態窒素』に変化します。そして、やっと植物は窒素を吸収できるようになるのです。
つまり、肥料をまいてから植物が窒素を吸収できるようになるまでには、「アンモニア態窒素」→『硝酸態窒素』という過程を必要とするためタイムラグがあります。
このタイムラグは天候(主に降雨や気温)に非常に左右されます。しかしそれでは、栽培上農業においては非常に困るのです。例えば葡萄ですと、雨などが多かったりして花が満開の時に窒素が効き始めると、良い葡萄が採れません。
しかし、きちんと実どまりした直後には、窒素が必ず効いてくれないと実は太りません。
窒素が効き始めるのは天候がどうあれ、遅くても早くてもいけません。この相反する状況はたった10日前後の時間で行われます。こんな時に役立つのが、「化学肥料」なのです。
化学肥料(窒素)の良いところは、「アンモニア態窒素」→『硝酸態窒素』という過程を経ずに、最初から植物に吸収されやすい『硝酸態窒素』の形態をとっている事です。化学肥料のお陰で、窒素を効かせたい時に効かせることが可能となり、我々農家は経営が安定するようになったのです。
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化学肥料(窒素系)と硝酸態窒素
こーんなに農業に役立ってきた化学肥料ではありましたが、化学肥料にはひとつ落とし穴がありました。それはなんと植物に吸収されやすい「硝酸態窒素」なのです。有機質肥料の窒素成分も、いつかは硝酸態窒素へ変化します。
しかし化学肥料の場合、効くのが速い反面流亡もし易いのです。モノの本によると、まいた化学肥料のうち50パーセントは流亡するとのことです。有機質肥料では流亡は起こりにくいと考えられています。
流亡した硝酸態窒素はどこに行くのでしょうか??答えは河川や地下水です。現在この地下水や河川に紛れ込んだ硝酸態窒素が環境問題においてクローズアップされています。
硝酸態窒素は、なぜ環境問題において取り上げられるようになったのでしょうか?
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硝酸態窒素について
硝酸態窒素は、植物にとって必要なのですが、我々人間にとっては有害なのです。
硝酸態窒素は、人間や動物など酸素呼吸をする生き物の呼吸を邪魔するのです。簡単に言うと酸素欠乏を引き起こします。
そのメカニズムはこうです。
動物は、空気を吸うと血液中のヘモグロビンの中の「鉄分」と「酸素」が結びつき、酸素と結びついた鉄分が体中の末端の毛細血管まで酸素を運び、酸素を離します。酸素と離れた鉄分は、今度は栄養素と結びつき、体中に栄養を運びます。
これが普通の酸素呼吸です。
ところが体内に入った硝酸態窒素は鉄分と結びつき、鉄分が毛細血管まで酸素を運んでも、酸素を離す作用をおこさせません。そして、体中に酸素がいきわたらなくなり、その動物は酸素欠乏を起こすのです。
(参考文献・「サラバ環境ホルモン」山城 眞著 宮日文化情報センター)
日本には多くの田畑やゴルフ場が点在しています。こうしたことを踏まえ、現在では国や県でも窒素量を減らす運動をしています
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対策は??
対策は、化学肥料中における、窒素肥料の使用量を減らすことが重要です。一般に農作物と言っても、作物によって必要な年間窒素量はまったく違います。
現在、各県では「エコファーマー認証制度」という制度があります。これは化学農薬や化学肥料の使用を軽減したり堆肥を使用したりして持続的循環的農業をしようとする試みです。
その中で、「葡萄」の場合は、年間窒素量の規定は8Kgとなっています。(10aあたり)わが園では、有機肥料とうまく組み合わせることによって、6Kgを実現しています。実現していますと言っても、もともとと言うかたまたまなんですが・・・(笑)
今までの農業は、大量生産大量消費の時代で環境に与える影響もあまり考えずにきたわけですが、農業自体が生態系を崩す自然破壊だと言う声も聞きます。
自然に対する負荷はできるだけ押さえ、次世代の子供たちに豊かな遺産を残したいですネ。
注: 化学肥料と呼ばれているものには、リン鉱石を削ってできたものや、こうもりの糞で作ったもの(リン酸)また、岩塩を削っただけのもの(塩化カリ)など天然由来のものもたくさんあります。
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