農薬とは?
農薬と聞けば、危険で恐いもの・・・。それが一般的な人々の考えでしょう。私は30歳から農業に携わるようになりました。
私も最初の頃、農薬が恐いもの、危ないものというイメージからこの世界に入ったのです。当初は、やはり用心して高級な
防毒マスクみたいなマスクをして防除をしていました。
その後、輸入農産物の、残留農薬問題や、国内での無登録農薬問題等、食の安全が高く叫ばれるようになりました。また
無農薬、有機農法なども脚光を浴び始めるようになりました。
我が農場では、従来から無登録農薬は扱っていませんし、農薬の使用基準はきちんと守ってきました。しかし、果たして私が
使っている農薬は安全なのか??
そんな疑問が大きくなりいろいろ調べるようになりました。私は、無農薬有機農法の立場にたたず、また、慣行農法の立場に
もたたず、あくまで客観的な立場で調べてみました。
そもそも農薬って一体何なのか?
簡単に言うと、病害虫から農作物を守り収穫量を増やす道具。人類を飢餓から防ぐことにおいての功績は農薬反対の立場の方
も認めざるを得ないだろうと思います。
では「リスク」はないのでしょうか?100パーセント安全なものは世界に存在しません。農薬は販売までに幾多の試験や実験を
行い、リスクを下げ病害虫に効果を出しながら、人間に影響を少なくするように作られていますが、誤った使用法や濃度によっては
人命を奪ってしまうこともあります。
「ADI」について
農薬には「ADI」と言って一日摂取許容量が定められています。毎日農薬を、一生取り続けても慢性毒性が出ないであろう農薬
の量のことです。
「ADI」は、WHO(世界保健機構)とFAO(国連食糧農業機関)の合同調査機関であるJMPRで議論され、決定されています。
その結果はCODEX(コーデックス委員会)に送られ検討され認証されます。そして国際的な残留農薬基準を検証しています。
年に1回、各国の代表や消費者団体などを交えた総会でCODEXの数値は決められています。変更されることもあります。日本で
は厚生労働省がその任にあたっています。
「ADI」は動物実験で得られた値に、人間と動物の違い等を考慮し、安全係数の1/100をかけたものです。
日本で販売されている農薬にはもちろんこの「ADI」が設定されています。葡萄の種無し化や野菜に使用されるジベレリン等の
植物ホルモンにあっても然りです。
で、実際スーパー等で販売されている野菜等を、実際に調理して消費者に一体どれくらい農薬が摂取されるか調べたデータ
があります。(マーケットバスケット調査)
オルトラン(殺虫剤) ADI(1日摂取許容量)に対し 1.46%
ダイアジノン(殺虫剤) ADI(1日摂取許容量)に対し 0.64%
オーソサイド(殺菌剤) ADI(1日摂取許容量)に対し 0.0052%
トリフミン (殺菌剤) ADI(1日摂取許容量)に対し 1.86%
(参考・農薬ネット)
結果はほんの一例ですが,店頭に並んでいる日本の野菜や果物は、農家が農薬の使用基準を守っている限り、残留農薬の体に
与える影響はほとんどないと考えています。それよりも、一番農薬の影響を受けると考えられるのは、やはり、直接農薬を散布し
ている我々農家なのです。農薬を減らし、品質が良い作物を作ることは、我々農業に従事する者の共通の願いだと思うのです。
まとめ
現在使用されている農薬は、発ガン性に関しては、かなり低いのですが(タバコや普通の食べ物と比べると問題になりません)
環境ホルモンに関しては調査は遅れていて、疑われている農薬もあります。
一方で、化学農薬を使う代わりに、あるいは減らすために使われてきた民間の植物抽出液や木酢の中には発ガン物質が発
見されたり、農薬並の検査等はまだまだ遅れており、安全面でまだわかっていない事も多いのです。
今後、私どもの農場でも、お客様や、また自身の健康のためにも可能な限り農薬を減らしていきたいと考えていますが、完全
無農薬で栽培する事は現在のところ不可能に近いと言えそうです。除草剤はほぼ100パーセントに近いくらい使用していませ
ん。これは雑草を大地に返し、土地の力を維持したいからです。そして堆肥や有機質肥料をふんだんに使い、健康な土作りに
努めています
また、病気に弱いブドウに関しては、雨よけビニールハウスにしており、雨風を防ぎ、農薬の散布回数を抑えています。
私達は、
・農薬は、100パーセント安全ではないが、基準を守っている限り危険ではないと
考えています。また減農薬に努めています。
・農薬に頼る前に、病気や害虫に侵されないような施設作りや樹体作りに努めています。
以上のことを踏まえこれからも安全で美味しい農産物を提供していこうと考えています。
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